我が子を抱っこしたい。小学生の看取り。

看取りでできること

小学校高学年の男の子。
幼い頃に事故に遭い意識が回復しない状態でした。24時間人工呼吸器を使用し、食事も経管栄養です。声をかけても目を開けることはない我が子。それでも、やっぱり我が子はとても愛おしい。

愛しい我が子を抱きたい。今回は小学生の看取りのお話です。

小学生の看取り

長年施設で暮らす男の子。在宅での介護は難しかったため入所を余儀なくされてはいましたが、お母さんは毎日のように面会に来ておられました。
限られた面会時間の中、お母さんは男の子に優しく語りかけ、男の子の顔や手足を拭いてクリームを付けてあげます。そして口の中をきれいにしてあげていました。ときには男の子の隣で読書をされることも…
お母さんが傍にいて、お母さんの手の温かさを感じ、男の子はきっと安らぎを感じていたと思います。

お母さん自身も男の子にふれることで繋がりを感じておられたと思うし、できることを精一杯してあげたいと望んでおられたのでしょう。

行事のときには、男の子が乗った車椅子を押して一緒に楽しみ、授業参観のときには、先生の話を熱心に聞きながら、男の子の様子を嬉しそうに見ておられました。我が子と過ごす時間はお母さんにとっても尊い時間だったのですね。

10年くらいそのような状態が続いた男の子。徐々に体調を崩し、看取りの時期を迎えることになりました。

抱っこしたい

残された我が子との時間。何ができるのだろうか?お母さんが望んだのは「抱っこすること」でした。

幼いときに事故に遭ってしまったため、抱っこできる機会が少なかった我が子。愛する我が子を抱きたい。お母さんは全身で愛情を伝えたかったのでしょう。

そして我が子のことも全身で覚えておきたかったのだと思います。しかし10年の時が流れ、男の子の身体はすっかり大きくなっていました。

人工呼吸器も使用していたので抱っこすることにもリスクが伴います。そこで、お母さんが抱っこを希望するときには看護師がお手伝いすることにしました。

母のぬくもり

抱っこの方法は、男の子のベッドの上にお母さんが座り、男の子をお母さんの膝の上に乗せる形で抱っこするものでした。

最初はおそるおそるのお母さん。それでもしっかりと男の子を抱きかかえます。久しぶりに抱っこする我が子を愛おしそうに見る姿に、母の強さを感じました。

言葉で表現できない男の子でしたが、心拍も安定しており表情もとても穏やか。お二人にとって本当にかけがえの無い時間だったと思います。

そして時が経ち、男の子は短い生涯を終えました。

本当によく頑張ったね。お疲れ様でした。短い人生ではあったけれど、周りに「愛すること」「愛されること」を教えてくれた人生だったと思います。私たちにも色々なことを教えてくれてありがとう!

自分の人生を生き抜いた男の子。きっと今はいつもお母さんの傍でお母さんを見守っているのではないでしょうか。

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