最後まで愛する家族と。看取りのとき。

看取りでできること

80代の男性の最期の時間。男性には奥様と3人の娘さんがいらっしゃいました。いつも面会に来てくださって、ご家族が男性のことをとても大切にされているのが伝わってきました。

最後まで愛するご家族と過ごされた男性の、こころに残る看取りのお話を紹介します。

家族の奇跡

私が夜勤の日でした。夕方、男性の血圧が60台と低下。男性の娘さんの一人は仕事で海外に行っておられました。
「娘さん、明後日、帰って来られるって言ってたから間に合わないかも…」そう思いながら、キーパーソンである奥様に電話をかけました。すぐに奥様が電話に出られたので状況を説明します。
すると「娘が帰って来てるので娘に替わます」と言われ電話を替わられたんです。

電話口に出られたのは海外にいるはずの娘さん。「さっき帰ってきたんです!すぐに行きます!」
なんと早めに帰国され、戻って来られたばかりとのこと。きっと男性が娘さんを呼び寄せたのでしょう。
奇跡だ…そう思わずにはいられませんでした。

最後の夜

ご家族が来られてから、男性の血圧は回復。意識レベルも低く反応の鈍かった男性ですが、ご家族の声掛けに反応されるようになりました。皆さんが集まってきて下さったのが嬉しかったのでしょうね。
それでも最後の時間はいつになるかはわかりません。こころの準備も少しづつできるようにと思い、ご家族には巡視の度に状態をお伝えしていきます。そして、ご家族自身に男性の身体に触れて頂きながら、男性の身体に起きている変化を感じていただきました。それは男性とご家族のスキンシップの時間でもありました。


明け方に訪室したとき男性の血圧は再度低下しており、最後のときが近付いていました。そんな中、奥様は「今日は(男性が)寝ようとしないんですよ。娘の手も離さないんです。」と穏やかな表情で話してくださいました。男性は血圧60以下でしたが、娘さんの手をしっかりと握っていたのです。

旅立ち

その後、娘さんたちは別室で待機。最後は奥様と夫婦水入らずの時間を過ごしてほしいという配慮からでした。そして朝を迎えます。男性は静かに息を引き取りました。愛する奥様がトイレへ行かれた間に…
最後の夜、愛する奥様と娘たちとかけがえのない時間を過ごした男性。ご家族に心配かけないよう、奥様が部屋を出て一人になった瞬間に旅立っていかれたのです。

家族の絆を感じる、とても素敵な夜でした。
心温まる時間に立ち会わせて頂き感謝しております。安らかにお休みください。本当にありがとうございました。

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