私の父は悪性リンパ腫という病気で亡くなりました。
悪性リンパ腫は血液の中のリンパ球ががん化し、異常に増殖することでリンパ組織に腫瘤を形成する病気です。
約9ヶ月の闘病期間、父と過ごした時間はかけがえのないものでした。
ある日、父が「手を握ってくれないか?」と言ってきました。これまで弱音を吐いたことがない父。その父が自身の不安を「手を握って」という言葉で間接的に伝えてきたのです。
父に触れるのは子どものとき以来。戸惑いながらも父の手を握ると、父は安心したような表情に変わっていました。
手を握るというスキンシップには、「安心感や幸福感が高まる」「ストレスと不安の軽減」「絆を深める」「自己肯定感の向上」「痛みの軽減」あります。
手を握り、傍に居ること。
それはとても大切なことなのです。
親の看取りが始まる

これまで大きな病気をしたことがなかった父。74歳でも現役で農業を続けていました。まだまだやりたいことだらけだった父。そんな父の身体に変化が…
年明けてすぐの頃から、左手が腫れてきたのです。最初は整形外科を受診したりしてましたが、原因がなかなかわからず…
そして、いくつかの病院を受診した結果、悪性リンパ腫と診断されました。その時点で2ヶ月ほど経過。すぐに治療を始めたいところでしたが、父が住む地域には血液内科の常勤の医師がおらず治療が困難な状況。
そのため、父の家から車で3時間程度かかる大学病院に紹介入院となりました。
入院時点より「家族で過ごす時間を大切にしてください」と言われており、病気はかなり進行している状態でした。
ここから父の看取りが始まります。
少しでも父の傍に居たい

父が癌…
これは大変なことになった。私には何ができる?
父が寂しくないように、なるべく見舞いに行こう!
私の家からも車で2時間かかる大学病院。うちは母子家庭で、当時私の子どもは小学校5年生と3年生。息子は野球のクラブチームにも入っていたし、私自身フルタイムで夜勤もしていたので時間に余裕があるわけでありません。
だけど今は父のことが大切。なので平日休みの日は、子どもが学校に行っている間に往復4時間かけて面会に行っていました。実質の面会時間は1時間程度でしたが。
それでも少しでも父の傍に居たかった。
不器用だけど家族想いで優しい父。私たち家族はそんな父のことが大好きで、家族みんなが父の回復を祈り、父の傍に居たいと願っていました。
不安を感じている父からの願い

父が入院になり、初めての面会のとき、父から「手を握ってくれないか?」と言われました。えっ…?
父に触れるのは子どものとき以来。そう言われて一瞬驚きました。
戸惑いながらも父の手を握ると、父の手はとてもあたたかくて。ふと、父っ子だった子ども時代を思い出しました。
子どもの前で弱音を吐いたことがない父。今、父は不安を感じているんだ…
癌という大きな敵に遭遇し、家族と離れ一人で病気と闘わなければならない。受け入れ難い真実が父を不安にさせていたのです。
その事実を目の当たりにしたとき、胸がしめつけられる感覚でした。父のためにできることは何か?
今を父の手を握ることしかできない。それでも、少しでも父の不安が軽くなるなら…
お父さん、気持ちだけはいつも傍にいるからね!そして面会に行くときはいつも父の手を握っていました。
スキンシップ5つの効果

父は手を握ると「ありがとう」と言い安心した表情になっていました。
大切な方に何もできていないと感じているとしたなら、ぜひ手を握ってあげてください。
手を握ること、スキンシップには5つの効果があります。
1.安心感と幸福感が高まる
2.ストレスと不安の軽減
3.絆を深める
4.自己肯定感の向上
5.痛みの軽減
1.安心感と幸福感が高まる
オキシトシンが分泌され信頼感や幸福感が増します。そして精神的な癒やし効果もあります。
オキシトシンとは「幸せホルモン」「絆ホルモン」「愛情ホルモン」などと呼ばれ、様々な生理的・心理的効果を持つことが知られています。
人との触れ合いや利他的行動(他者のために何かをすること)によって双方で増やすことができ、相手のためにしたことが自分のためにもなるという特徴があります。

大切な方に安心感を与えることができて、自分自身も幸せを感じらるホルモンです。
参考記事:《SHISEIDO BEAUTY WELLNESS【幸せホルモン、「オキシトシン」とは?】》はこちら
2.ストレスと不安の軽減
心拍数が減少し心臓の負担が軽減します。心拍数が減少することは、ストレスや不安が軽減していることを示しています。
オキシトシンによって扁桃体(大脳の側頭葉内側部に位置する小さなアーモンド型の神経構造。恐怖、不安、緊張、怒りなどの感情に関与する)の活動が調整され、恐怖や不安などの負の感情を軽減する効果があります。
スキンシップは扁桃体の活動を抑制し、ストレス反応を和らげる効果があるのです。
3.絆を深める

肌の触れ合いは直接的に愛情を伝え、安心感を与えることができます。
触れ合いを通じてお互いの感情を直接的に感じ取ることができるため、つながりを実感し絆が深まります。
4.自己肯定感の向上
スキンシップを通じて、「自分は大切にされている」「自分といることを喜んでくれている」と感じ、自己肯定感が高まります。
スキンシップはストレスホルモンの分泌を抑え、リラックス効果をもたらします。これによりネガティブな感情が軽減され、自己肯定感が育ちやすくなります。

自己肯定感とは、ありのままの自分を肯定する感覚です。
スキンシップにより、「ありのままの自分でいいんだ」と感じることができ、自分自身を他者と比較することなく認め尊重し、結果として前向きに行動することができるのです。
5.痛みの軽減
オキシトシンの分泌:オキシトシンには痛みを和らげる効果があることが知られています。
スキンシップで安心感を得るとことで、ストレスが軽減しコルチゾール(ストレスホルモン)の分泌を抑制。コルチゾールが減少すると、痛みへの感受性が低下することで痛みを感じにくくなります。
※コルチゾール:副腎皮質から分泌されるホルモン。ストレスを受けると急激に分泌が増えるため「ストレスホルモン」と呼ばれる。
手を握る以外でもマッサージなどのスキンシップは、筋肉の緊張をほぐし筋肉の緊張が緩和されることで緊張による痛みが軽減します。また血管が拡張することで血流が改善し、発痛物質の排出が促されて痛みが緩和されます。
痛みの軽減方法については次の記事が参考になりますよ(^^)
《森整形外科リハビリクリニック【医師監修】自律神経と痛みの関係|慢性疼痛の軽減方法とは》はこちら
手を握ることは安心感につながる

大切な方に何かしてあげたい…。けれど、何をしてあげたら良いのかわからない。
そんなときは手を握り、傍に居てあげてください。
それは小さなことかもしれませんが、安心感につながる大きなことでもあるのです。
手を握ることは、「あなたは大切な人だよ」と伝えることであり、安心感を提供できます。
ぬくもりは必ず伝わります。
今日も、皆さんと、皆さんの大切な人が幸せを選べますように。
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