最後まできれいでいたい。そう思っている女性は多いのではないでしょうか。そして『きれい』を求めているのはご本人だけということもありません。残されたご家族も私たち医療従事者も「きれいにして見送ってあげたい」と願っています。
最後の化粧(エンゼルメイク)ではその方らしい表情になるよう、穏やかなお顔で旅立つことができるようにと願いながら、お手伝いをさせていただいています。
これは、あるご家族のお話です。
ご家族と一緒に
80代の女性がご家族に見守られながら、眠るように人生を終えられました。ご家族の皆さんは女性の最後に立ち会えたことで安心された様子でした。
その中には2人の女性(お孫さん)の姿も。20代前半でしょうか、可愛らしい方たちです。穏やかな表情で眠りについた女性。皆に見守られ、こんなに可愛いお孫さんたちもいて幸せだったろうなぁ…
そう感じながら、最後のケア(エンゼルケア)に入らせていただきました。女性の身体を清め、きれいに整えていきます。
今までお疲れさまでした。一緒に過ごさせて頂きありがとうございました。これからはゆっくりと休んでくださいね!と、これまでの女性の労をねぎらい、人生最後の場所にここを選んで頂けたことに感謝しながらケアを進めます。
最後はエンゼルメイク。
お化粧は私たち職員でなく、お孫さんにしてもらった方が女性も喜ぶのではないか?お孫さんたちが望まないのであればこちらでメイクをしたらいいし、とりあえず声を掛けてみよう!
そして別室で待機していたお孫さん方に声をかけると「えーっ!いいんですか?」とちょっとビックリしながらも、嬉しそうに了承して頂けました。
お孫さんからのメイク
女性の元に到着すると「おばあちゃん、私たちが化粧するからね」と優しく声をかけるお孫さんたち。
「こっちの方が良くない?」
「ピンクすぎるかなぁ?」
「この方がおばあちゃんらしい?」
和気あいあいと化粧を進めていくお孫さんたち。見ているこちらも微笑ましくなります。
きっと化粧をされている女性も会話に参加されていたことでしょう!
「おばあちゃん、きれいになった?ありがとう」って。
呼吸が止まっても、心臓が止まっても、いつまでも大切な家族。女性の人柄や歴史を知っているお孫さんだからこそできたメイク。そこにはとても安らかできれいな女性の姿がありました。
女性が一番女性らしい表情となったメイクだったと思います。家族の力を感じた瞬間でした。
最後までご家族と
私はエンゼルケアに入らせて頂くときは、極力、ご家族へもお声掛けしています。病院や施設によっては、ケアの間は別室でお待ち頂くこともありますが…
家族を看取るとき「もっと何かできたのではないか?」「本当にこれで良かったのだろうか」と悩むことがあります。わたし自身、父を癌で看取り、母を孤独死という形で無くしているので、そう感じています。
後悔が残るのは残されたご家族です。だからこそ、その後悔を少なくするためにも『できること』はご家族の手に委ねたい。
「何もしてあげれなかった」から「これだけはできた」と思って頂けるように。
もちろんご家族の思いもそれぞれですので、エンゼルケアは職員に任せたいと思われるのであれば無理にお願いすることはありません。大切な方を亡くされたばかりのご家族は、その現実を受け入れること
が困難なこともあります。
ご家族の気持ちが重要となりますので、あくまでも選択肢はご家族に委ねての声掛けです。
それでも一緒にケアしたいとおっしゃって頂けるのであれば、自己満足かもしれませんが、私は嬉しく感じてしまいます。
亡くなられた方にとって、最後までご家族の手でケアしてもらい、ご家族と時間を過ごせるのであれば、こんなに幸せなことはないのではないでしょうか。
何ができる?
「家族でできることはあるの?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、わたし自身は、普段ご家族がされていたことなら何でもできるのではないかと思っています。
・顔を拭く
・口の中をきれいにする
・入れ歯を入れる
女性であれば
・化粧をする
・マニキュアを塗る
男性であれば
・ヒゲを剃る
・靴下をはかせる
大切なのは亡くなられた方を思い、その方がその方らしく旅立つ準備を一緒にすることです。そうすることで、ご家族に小さな達成感が生まれると思います。
「これだけはしてあげられた!」という達成感。
それはたとえ小さなことのように思えても、いつまでも心に残る思い出となります。
大切な家族を最後まで大切にできた記憶は、ご家族の安寧につながるのではないでしょうか。
今回は『家族』の場合でしたが、家族という形でなかったとしても、大切な方を最後まで大切に思う気持ちは一緒だし、できることはあると信じています。
皆さんと皆さんの大切な方が幸せを選んでいけるますように!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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